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◆◆◆INFORMATION◆◆◆
Dance Asia Kick Off Program
Encounter:
ジェコ・シオンポと
ディック・ウォン


上演・トーク
9月19日〜21日

WS
9月16日〜17日

東京・森下スタジオ

終了しました

 

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ジェローム・ベル『ピチェ・クランチェンと私』(横浜トリエンナーレ)

 国際美術展「横浜トリエンナーレ」の一環として、フランスの振付家、ジェローム・ベルとタイの振付家/ダンサーのピチェ・クランチェンの作品『ピチェ・クランチェンと私』が、11月1日、2日に、横浜赤レンガ倉庫1号館で上演されました。この作品は、二人のアーティストが舞台上に向き合って座って対話をして、それぞれのダンスや方法論、ひいては「コンテンポラリーダンス」とはなにかというダンス観を見せていくという二人のやり取りそのものを舞台作品としたものです。2005年にバンコクで初演され、それ以来、世界各地で上演されてきました。それが誇張でない証拠に、私は、2006年にチュニジアで一度公演を見ており、今回も数日前には武藤たちが参画していたインドネシア・ダンス・フェスティヴァルで上演されていました。

 この一風変わった作品、すなわちフランス人のコンテンポラリーダンス界の中でも既成のテクニックの組み合わせで作品をつくることに疑問を抱いたジェローム・ベルと、タイの古典仮面舞踊劇、コーンを16年間修行していた「コテコテの」古典舞踊手、ピチェの二人を出会わせてみるという発想の裏には、「第3回ITIアジアダンス会議」にも参加してくれたキュレーターのタン・フクワンという仕掛け人がおり、この作品は彼の委嘱によりバンコク・フリンジ・フェスティヴァルで初演されたものです。
 
 舞台には、椅子に座って向き合った二人。まず、ジェロームが英語で、ピチェに質問をしていきます。「あなたの名前は?」「どこに住んでいるの?」「何歳?」「職業は?」。「I'm a dancer」という答えに、ジェロームが「どうしてダンスを始めたの?」と質問を重ねていき、ピチェのダンス人生が語られ始めます。この作品は、舞台上の二人が向き合って座っているため、客席の作り方によって、二人の表情を同時に捉えるのはむずかしいのですが、私は、一日目は下手でジェロームの表情を見て、二日目には上手でピチェの表情を堪能しました。一体、今までこの二人は何度同じ質問をしあったのだろうと思うのですが、ジェロームの表情が秀逸で、その質問をまるで初めて聞いたかのように、それも感情を思いっきり顔に出して、「ああ、なるほど」といったような顔つきで聞いているのです。こういうところは、元フランス在住者の私としては、非常にフランス人的だなぁと思います。顔の表情がくるくる変わる。ピチェにコーンを習うシーンでは「ぼくは、初めてやるんだからね」と言いながら、不器用にピチェのポーズを真似るのですが、この「初めてなんだからね」というせりふを彼は何度言ってきたことでしょう?けれども、それがわざと下手に演じているとも見えず、観客はごくごく自然にそのことばを信じてしまうのです。

 ピチェはと言えば、自信たっぷりのいつものピチェらしい、迷いがないスパっとした答え方をするのですが、それが段取りに見えません。最初に創ったときは、まず、即興から始めて、だんだん形にしていき、現在では、枠組みは決まっているものの、毎日違った質問が出たりするため、互いに気が抜けないことが、作品としての新鮮味を保っている秘訣だそうです。実際、一日目の終わりに「明日は、別バージョン期待しているからね」と私が、わざとプレッシャーをかけると、ジェロームのせりふに前日にはなかったものが付け加わっていて、終演後「ほら、あの部分、昨日はなかっただろ?」と鼻高々でした!

 このようなプレゼンテーションの方法に加え、やはりこの作品の本質は、それがダンスの本質について論じているところでしょう。ピチェへの質問が一通り終わると、今度はジェロームが、「ぼくについてもなにか聞きたいことある?」と促し、「ぼくも踊ったんだから、君も自分のダンスを見せてよ」と言うと、「ぼくは振付家であって、ダンサーじゃないから、専門家じゃないんだからね」と言い訳しながら、自分の作品に必ず出てくるというお気に入りのシーンをやってみせます。それは、『The Show Must Go On』という作品の中に出てくるデヴィッド・ボウイの曲『レッツ・ダンス』をかけて、ただ観客の前に立ち尽くし、じっと観客をなめるように眺めていき、歌詞が「レッツ・ダンス!」となったところで、まるで自分の部屋の中で曲を聴きながら、身体をゆすってみる程度のダンスをしてみせるというものです。ジェロームがピチェに「ダンスにはなにが不可欠か考えた、なんだと思う?」と問うと、ピチェは「からだ」と答えます。「ビンゴ!」ということで、それを表したシーンなのだそう。ダンサーが特権的な身体や技術を持っていて、観客がそれを賞賛するという「ヒエラルキー」を壊し、ダンサーと観客を対等な関係にしたい。このように、ダンスについて考える上で示唆的なことばがたくさん詰まっていながら、それが頭でっかちにならず、どこか人をくったようなとぼけたジェロームの雰囲気が、ユーモラスでもあり、「お勉強」に陥ることから救っている気がしました。ただし、日本での公演は、カンパニーの強い要望により、イヤホンガイドの同時通訳で行われたため、観客が耳から情報を得ることに一生懸命になってしまい、見ることや本人たちのことばのトーンで分かるユーモラスさを少ながらず逃していることが残念でした。けれども、私は実際に一度この作品を招聘しようとダンスのプロデューサーにかけあったことがあり、そのときには、「ダンスの観客にはこんなせりふの多いものはむずかしい」と一蹴されたという経験があるため、やはり横浜トリエンナーレという「ダンス」とは違った枠組みの中でこそ、実現した公演なのではないかと思います。

 最後に、正に「世界初演」となったハプニングをひとつ。二日目の舞台で、上演中にピチェが質問する立場のとき、「ちょっと、トイレ行って来ていい?」と言って、ジェロームひとりを舞台に残し、本当にトイレに行ってしまったのです!終演後、ジェロームに聞いたら、こんなことは初めてで、自分は待っている間舞台上でたばこのような小道具もなく、もう、どうしようかと思った、とのこと。それは、こんなハプニングさえも織り込んでいけるほど、作品としての屋台骨がしっかりしていることの証明でもあり、また、ピチェの作品に対する信頼が伺えた出来事でした。

(後藤美紀子)


ピチェ・クランチェン@横トリ追加情報

横浜トリエンナーレの公式サイトに詳しい情報が出ました。
ここです。
入場には整理券が必要とのことです。
サイトをご確認の上、お出かけください。


『ピチェ・クランチェンと私』@横浜トリエンナーレ

横浜にて現在開催中の「横浜トリエンナーレ」にて、フランスの振付家ジェローム・ベルがピチェ・クランチェンとともに作った『ピチェ・クランチェンと私(Pichet Klunchun and Myself)』が上演されます。2005年の初演以来、世界中をツアーし続けている話題作がいよいよ日本にやって来ます。

日時/11月1日(土)18:30、2日(日)12:00
会場/横浜赤レンガ倉庫1号館3Fホール
詳細は、横浜トリエンナーレ公式サイトをご参照ください。

ダンスとそれを成り立たせている二人のバックグラウンドについてのトークによって、異質な文化とそこに属する二つの「個」のありようが見えてくる、刺激的な「異文化間パフォーマンス(intercultural performance)」。ディック・ウォンの『Encounter@Tokyo』とも関連付けながらご覧になれば、今日の身体表現における一つの争点がよく理解できるのではと思います。

ピチェは、今月8日に大阪での公演、次に福岡でのワークショップ、
島根の公演を終えたあと、本作品をインドネシアで上演し、再度来日します。
今や、世界を飛び回るタイを代表するダンサー/振付家といえるでしょう。


「大阪BABA」ピチェ・クランチェン公演レポート

同じく「大阪BABA」にてピチェ・クランチェンが能にアプローチしました。
会場となった山本能楽堂のブログにレポートが出ています。
能の側から見た、ピチェへの驚き。ぜひご覧ください。

山本能楽堂オフィシャル・ブログ 「能楽堂の1日」



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